ホラー的要素がありつつそこを強調しない
ホラー的な要素がありつつ、あえてそこは強調しないというところが魅力の一つでもあります。
ホラーにありがちな不気味なBGMで怖さを演出するということはありません。
むしろ終始楽しそうな雰囲気が漂っています。
突然何かがでてきてビビらせるということはしません。
主人公がそこまでこわがっていないというのも怖さを減らしている要因だと思います。
過去に死んだ人はいるけれど、この作品が描く現在の世界では誰も死ななかったというのも安心して見ていられる要因かもしれません。
登場キャラクターはそれぞれ好奇心や何かの目的のために行動しているので、怖さの部分があまり入ってこないというのもあります。
ホラーではよく霧を怖さを演出するものとして使われたりするのですが、電脳コイルでは登場キャラクターが霧を見つけるとむしろ喜んでいます。
オカルト的な要素が最高!
ぼくは子供の頃からオカルト的なものが大好きでした。
いまではすっかりテレビ番組でオカルトが題材にされたものは減ってしまったので、非常に残念です。
電脳コイルの魅力はオカルト的な要素にもあります。
日常の延長にある科学で説明できない不思議な世界というのは魅力があります。
電脳コイルは異世界での冒険を描くようなフィクションとは違って、日常のすぐそばに特定の条件を満たすと異世界に行けて、その異世界(あっちの世界)も日常の延長のような場所になっているというまさにオカルトな世界です。
視覚を操作してAR(拡張現実)を作り出すだけの道具がなぜか魂にも影響を与えるというのが、この作品の最後まで問題にされていることです。
攻殻機動隊と似たようなテーマのような気がしますが、電脳コイルの方がよりオカルト感を押し出しています。
作品の中でも「はざま交差点では交通事故が多く発生している」とか「ミチコさんに連れていかれると帰って来れなくなる」とかいう都市伝説が噂されており、良い感じに不気味さを演出してくれています。
作品の中で、この都市伝説を扱ったオカルト番組も出てきており、その番組の作りがリアルで面白かったです。こういうのあったよねー的な番組でした。
都市伝説でよくある「やってはいけないこと」とか「行ってはいけない場所」というのも出てきます。
イサコの夢の世界とヤサコの夢の世界がつながっていたというのも興味がそそられました。
ARが見せてくれる世界
AR(拡張現実)が日常にあるとどんな世界になるのかというのも見せてくれています。
電脳コイルの世界では、ARを見るためのメガネを誰もが持っています。
第一話でいきなり登場するのが電脳ペットのデンスケです。
電脳ペットというのは、ARを見るためのメガネをかけると見ることができる生き物です。
個人的に、ハムスターの電脳ペットが登場したのが嬉しかったです。
メガネで見るだけなので、電脳ペットを触ることはできないし、体温もありません。
そして、メガネを外すと見えなくなります。
でも生き物なので自由に動き回って迷子になることもあります。
うちのハムスターも部屋の中で迷子になることがありましたが、作品の中の電脳ハムスターも迷子になっていました。
電脳ペットの他にも、「何もない空中にキーボードやモニターが出現」とか「学校で配られるプリントが空中に表示される」とか「手で電話の形を作るだけで電話ができる」とか実際にARで実現できそうな面白い要素がいっぱいありました。
メガネがスマホの進化系の役割を果たしてくれています。将来これに近いものは作られるのかなーという気はしています。というかスマホを使ったARはすでにありますね。(まだ実用例は少ないですけど)
冒険心をくすぐる(ワクワクする)
主人公が小学生というのもあって、少年少女が持つ冒険心というのを思い出させてくれるアニメでした。
「古い空間」の近くには「メタバグ」と呼ばれるものがあり、それを集めるとメガシ屋というところでアイテムと交換してくれます。
なんというか宝探し的な要素があり、ゲームみたいな感じです。
「古い空間」には危険も色々あって、
- 「古い空間」にはイリーガルと呼ばれる得体のしれない電脳生物がいます。
- 公的なロボットのサッチーがARのバグを消去するために巡回しており、サッチーは「古い空間」を見つけるとバグとみなして消去しようと攻撃してきます。ついでに子供たちも攻撃してきて、食らうとメガネが壊れます。(でも、サッチーは神社とか建物の中には入って来れません。)
- 「古い空間」付近では電波状況が悪く、メガネがまともに機能しないときがあります。これが原因で密室に閉じ込められて、誰とも連絡が取れなくなったこともあります。
- 「古い空間」にいるミチコさんに連れていかれると帰って来れなくなるという噂話もあります。
こういう制約がいいバランスで緊張感を与えてくれます。
イサコが使う「暗号」もワクワク感を作ってくれる要素の一つでした。
「暗号」というのは、地面などにチョークで描く魔法陣のようなもので、攻撃や防御を行うことができます。後半はチョークで描くことなく、イメージするだけで発動するチートなことをやっていましたけど、体に負担がかかるようです。
特定のルートを通ると「古い空間」が出現するというのも面白くて、ゼルダの伝説を思い出しました。
わからないものを解き明かしていく謎解きとかサスペンス的な面白さもありました。
最初はよくわからなかったミチコさんの正体も次第に明らかになっていきます。
ミチコさんのラスボス感も楽しめましたw
小学生が抱える葛藤
小学生が抱える複雑な葛藤もうまく描いていて面白かったです。
優越感とか安心感を得るために、いじめが発生するということは日常でよく起こることをこの作品は明らかにしてくれています。
そして、いじめを行っている本人は楽しいからいじめだとは認識しないこととか
第三者もいじめの対象にされたくないので傍観者となってしまい結果的にいじめを助長してしまうこととかうまく描いてくれています。
イサコは最初いじめの対象になっていたのですが、能力の高さと心の強さがあったため、結局いじめにはなりませんでした。
自己肯定感が低く、他人からの評価に大きく価値を置いてしまっている人は、いじめの対象にされたときにつらくなるんだろうなと思いました。
あと、小学生の男の子にありがちな好きな女の子をからかってしまうというのもうまく描いていていました。(小学生時代の自分自身を思い出して少し恥ずかしくなりましたw)
フミエが受験勉強が一番大事だと思い込もうとして本当は興味のあることに蓋をしてしまうというのもありがちな行動だなと思いました。
手でさわれるものだけが大事なのか?
24話でヤサコのお母さんがヤサコを抱きしめながら言ってたセリフが印象的でした。
「お母さんのからだ、あったかい?やわらかい?ちょっと痛い?こうして触れるものが、あったかいものが信じられるものなの。ぎゅっとやると、ちょっとくすぐったくて、ちょっと痛いの。それが生きてるってことなの。メガネの世界にはそれがないでしょ?戻って来なさい。生きてる世界に。あったかい世界に。」
これは良いことを言っているようですが、半分正しくて半分間違っていると思ったので非常にもやもやしました。
昔からある、子どものことを理解できない大人による若者批判という構図なのかなと思いました。
メガネの世界はこの作品の子どもたちにとってはリアルな世界で、生きている実感を味わえる世界でもあります。
ヤサコはお母さんの言葉に影響されて思い悩むのですが、最終的には自分の感じたもの(リアルだと思えるもの)を信じて行動を起こします。
ヤサコが置手紙をして金沢まで一人で行くシーンは、好きなシーンの一つです。
現実逃避は根本原因の解決にはならない
最終話でイサコがあっちの世界から抜け出せたのは、根本原因を理解してその問題を克服することができたからだと思います。
根本原因とは、お兄ちゃんの死を受け入れられない、お兄ちゃんと離れたくない、お兄ちゃんを独り占めしたいという内面の問題です。
もっと正確に言うと、お兄ちゃんの死を受け入れられない自分を受け入れられないという複雑な状態でもあったと思います。
あっちの世界でお兄ちゃんと過ごすことができても頭の片隅にはこの問題が常にあり、結局は幸せになれないということなのかなと。
ヤサコがイサコを受け入れることで、イサコも自分自身を受け入れることができて、問題から解放されたのかなと。
この作品は幸せになるための方法を教えてくれているような気がします。
幸せになるためには、自分自身の良いところも悪いところもひっくるめて受け入れるのが大切なんでしょうね。(林原めぐみさんの「raging waves」の歌詞にもありましたね。機会があれば、ぼくが学生のときにハマってた林原めぐみさんのことも書きたいです。)
さいごに
電脳コイルを見終わったら次はキングダムを見始めました。
キングダムも何とAmazonプライム会員なら無料で見られます。
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※時期によっては無料で見られるアニメが変わるようです。