コインマジック(Coin Magic)
- 2019.07.16
- 演目紹介
コインマジックとは
コインマジックとはその名の通り、コイン(小銭)を使ったマジックです。
いつでも財布に入っている日常の道具なので、「マジック見たい」と言われたときに気軽にできるマジックです。
日常の道具でいつでも演じることができるのはジャグリング、バルーンアートなどとは違うマジックの特権かもしれません。
また、日常の道具ということで、観客の衝撃も大きいかもしれません。
いかにもマジックの道具というものを使うと「なんか仕掛けがあるんでしょ?」と思われそうですけど、コインだと「え?何も仕掛けないはずなのに!」と思ってもらえます。
秘密の道具を使えば、普通のコインだけでは起こせないこともできたりしますけれど、それだと気軽に演じることができないので、私は普通のコインだけを使うのを好みます。
現象がわかりやすいというのも大きな魅力です。
消える、出てくるなど子供にも伝わりやすいので、小さな子供に見せるときは1枚のコインの出現・消失現象を繰り返します。
気軽さや分かりやすい現象は大きなメリットなのですが、デメリットとしては道具が小さいので、大人数に見せることができないということです。
私もテーブル上のコインの移動現象などは大道芸で人数がそこまで多くないときにしか行いません。
大人数にコインマジックを行う時もあるのですが、そのときにどういう工夫をしているかは後で書きます。
コインマジックの現象
消失
コインを消すというただそれだけの現象なのですが、コインマジックと言えばこれを想像する方も多いと思います。
財布から1枚取り出せばぱっと行える現象です。
以下のように様々な方法があります。
- コインを握り込んでおまじないをかけると消える
- 手をかざした瞬間に消える
- 投げ上げる動作をした瞬間に消える
- カードの下に入れておまじないをかけると消える
- ハンカチの中に入れると消える
- コインボックスの中に入れておまじないをかけると消える
- 紙で包んで燃やすと消える
出現
消失の次にシンプルで、わかりやすいのは出現です。
私の経験では、小さな子供にマジックをするときは、消失よりも出現の方が喜ばれる傾向があります。
何もない状態からアイキャッチ的に1枚コインを出現させてマジックを始めるということもあります。
以下のように様々な出現方法があります。
- フラッシュペーパーを燃やすとコインが出現
- 何も持っていない手を握って開くと出現
- 手をかざした瞬間に出現
- 空中、袖、観客の体など様々な場所から出現
- カードの下から出現
- ハンカチの中から出現
- コインボックスの中にから出現
- 封をされている封筒なや財布などから出現(印をつけたコインを使うことが多い)
移動
消失と出現を組み合わせて、移動現象として見せることもあります。
よくあるものとしては、3~6枚ほど使って1枚ずつ移動させるというマジックです。
1枚ずつ移動させるマジックは、途中から先が読めてしまうのですが、そのおかげで最後の1枚が移動したときに終わりだとわかるので、自然と拍手が起こります。
増加・減少
すでにコインがある状態で出現させると増加、消失させると減少ということになります。
どんどん増やし続けるとマイザーズドリームと呼ばれるマジックになります。
1枚ずつ増やしていって、3枚か4枚まで増やしてから、今度は1枚ずつ減らしていくというマジックをするマジシャンもいます。
変化
銀貨が銅貨に変化する、小さなコインが大きなコインに変化する、コインが全く別のものに変化するなど様々な変化現象があります。
銀貨が銅貨に変化する程度だとかなり細かい変化なので、少人数向けのマジックになります。
貫通
コインがテーブルを貫通する、コインがハンカチを通り抜けるなどコインが何かを貫通するという現象もあれば、逆に、たばこがコインを貫通するなど何かがコインを貫通するという現象もあります。
復元
欠けたコインが復活する、穴があいたコインが元に戻るなど様々な復元現象があります。
名前のついたコインマジック
ワン・コイン・ルーティーン
名前の通り1枚のコインだけを使うルーティーンです。
1枚が出現したり消失したりを繰り返します
終わり方が難しいマジックでもあります。
一番簡単な終わり方としては最後にジャンボコイン(大きいコイン)に変えて、オチをつけるという方法です。
シンプルに1枚だけでマジックを終わらせるなら、テンポ・間・表情・視線・姿勢などに変化をつけてちゃんと終わった感を出さないと、「まだ続くのかな」と思われてしまいます。
コインズ・アクロス(Winged Silver)
3~6枚程のコインを右手から左手へ(もしくはその逆に)1枚ずつ移動させるマジックです。
シンプルな技法のみで行うこともできるので、最初に覚えるコインマジックとしては定番です。
単にテーブルの上で左右の手だけで行うのが基本ですが、移動先として観客の手を使ったり、グラスを使ったりすると、移動したときの衝撃が大きくなったりします。
コインアセンブリー
まず、4枚のコインを四角形に並べて、それぞれの上にカードを1枚ずつのせます。
おまじないをかけて左右の手で2枚のカードをめくるとコインが移動しており、これを繰り返すことで最後には1枚カードの下に4枚のコインが移動している、そういうマジックをコインアセンブリーと呼びます。
基本は4枚のコインと4枚のカードを使うのですが、4枚のコインと2枚のカードを使うパターンもあります。
また、最後に一か所に4枚のコインが集まるのが基本ですが、一瞬で元の位置に戻るという期待を裏切るパターンもあります。
チンカチンク
コインアセンブリーで行っている現象を左右の手だけで行うのをチンカチンクと呼びます。
4枚のコインと2枚のカードで行うコインアセンブリーの2枚のカードのところを左右の手に置き換える感じです。
基本的にはコインアセンブリーよりもチンカチンクの方が難しいです。
カードを使うとカードを置いたあと少し休憩することもできるのですが、チンカチンクは常に左右の手で技法を行っているような状態なので、緊張状態が最初から最後まで続きます。
コイン・スルー・ザ・テーブル
コインをテーブルを貫通させるマジックです。
基本は3~4枚のコインを1枚ずつテーブルの上から下に貫通させるという現象を行います。
ラッピングと呼ばれる技法を使うことが多いマジックなので、演じられる状況がかなり限られます。
テーブルをはさんで対面に観客がいる状態でしかも座って行うという状況もしくはバーカウンターごしに見せるという状況でないとなかなかできないマジックです。
私も過去にかなり練習したにもかかわらず、すっかり演じる機会がなくなりました(笑)
スペルバウンド
1枚の銀貨が1枚の銅貨に変わるなどコインの種類が変わるマジックです。
基本的には手で軽くなでてやると変化するという見せ方をします。
1枚だけで変化現象を行うという非常にシンプルだからこそ不思議さも大きいです。
銀貨から銅貨、銅貨からチャイニーズコイン、そこからまた銀貨と変化させるマジシャンもいます。
ワイルドコイン
複数枚のコインで次々とコインの種類が変化するマジックです。
基本は銀貨4枚程を1枚ずつ銅貨に変化させるというものだと思います。
カードマジックでもワイルドカードと呼ばれるマジックがありますが、それのコイン版です。
ハンキーパンキー
ハンカチから次々とコインが出現するマジックです。
右手を覆うようにかけたハンカチを左手でつまんでひっくり返すとコインが出現して、左手を覆うようにかけたハンカチを右手でつまんでひっくり返すとコインが出現して、、、というのを繰り返します。
4~6回繰り返せば十分なのでそのあと何かオチを用意するのが基本です。
最後にライターとタバコが出現したり、ジャンボコインが出現したり、最初に出していたコインよりも少し大きめのサイズのものを出現させると驚きも大きくなり終わった感も出せます。
ここまで上に挙げたものは、クロースアップマジックの分野になりますが、ハンキーパンキーはステージマジックの分野になり、大人数に見せることもできます。
マイザーズドリーム
私がステージショーで好んで行っている演目です。
次々とコインを出現させて何か入れ物に放り込んで行くマジックです。
少なくとも10枚以上は出現させます。50枚以上も出現させるマジシャンもいます。
私は20枚だけ出現させます。
コインを入れるのに多くのマジシャンが使っている物としては、ワインやシャンパンなどを冷やすのに使われるアイスペールです。
コインを入れたときに音が響き渡るので、遠くにいる観客にも音でコインの存在を伝えることができます。
私は東急ハンズで売っているアイスペールを使用しております。4千円程だったと思います。
ニトリに千円程の安価なアイスペールが販売されているので、安く済ませたいならニトリのアイスペールはオススメです。
ただ、私はニトリのアイスペールは少し扱いづらいと思っているので使っていません。
魔法瓶のような中に真空が作られている構造のアイスペールは、コインを入れても音があまり響かずにぶい音だけが鳴るのでオススメできません。
スリー・フライ
3枚のコインが左右の手を1枚ずつ瞬間移動するというマジックです。
色んなマジシャンがいろんなやり方を考案しておりますが、私が知っている中ではダローのスリー・フライがシンプルで不思議です。
これも私は過去にめちゃくちゃ練習したにもかかわらず、すっかり演じなくなった演目です。
コインのフラリッシュ
コインを使ってマジック(不思議なこと)ではなく、ジャグリングのような技(巧みさ・器用さ)を見せるのをフラリッシュと呼びます。
いくつか名前のついたフラリッシュを紹介します。
コインロール
手の甲側の指の上の第2関節と第3関節の間を、親指と人差し指の間からスタートして薬指と小指の間まで(またはその逆)を転がしていく技です。
私がよくやる方法としては、親指から小指まで手の甲側を転がしたら親指で手の平側を移動させてまた手の甲を転がしていくというものです。
手の甲側でずっと往復させたり、左右の手の甲側を交互に転がしたり色んな方法があります。
ロールダウン
シカゴの四つ玉と同じ要領で指と指の間に挟むようにして、4枚のコインをそれぞれ5本の指の間4か所に広げていく技です。
コインの側面にギザギザがないとやりにくいです。
ロールダウンをするためにわざわざ側面を少しずつ削ってギザギザを作るというマジシャンもいるみたいです。
親指と人差し指で4枚重ねたのを挟むところからスタートして、1枚ずつ小指側にもっていく方法や2枚重ねた状態で途中まで移動させてから最後一気に全部広げる方法などがあります。
5枚使って、最後の1枚を親指と人差し指の間に広げるという技もあります。
マッスルパス
手の平の真ん中にコインを置いて、親指の付け根のところにある筋肉を使ってはじくようにして上に飛ばす技です。
マッスル(筋肉)という名前の通り手の筋肉を使って飛ばします。
腕を使って投げるわけではないので、腕をふらないと上がらないというのは間違いです。
反対の手でキャッチしてから、その手を少し上に上げると高く飛んだように見えるのでオススメです。
テレビでマジシャン緒川集人さんがやっているのを見て自分もできるかなと思ってやり始めたら全くできなくて自己流で1ヵ月かけてやっとコツをつかめました。
マジシャンではない友人にコツを教えたら即座にできた人もいるので、コツがわかればあっさりできるのかもしれません。
コインマジックで使うコイン
日本円(10円玉、100円玉、500円玉)
財布からぱっと取り出して気軽に演じることができるのが日本円の小銭です。
以下に挙げるようなコインのサイズに比べて小さいので少し扱いづらいのが問題です。
500円玉が扱いやすくて観客も見やすいので、一番コインマジックに適していると思います。
ハーフダラー
多くのマジシャンが使用しているのがアメリカの50セントコイン(ハーフダラー)です。
色んなマジックショップやコインショップで300円程で販売されております。
500円玉より少し大きくて直径3cm程で、側面のギザギザもしっかりあって扱いやすいです。
500円玉をマジックで使うよりもコスパがいいです(笑)
表はアメリカの元大統領ジョン・F・ケネディが描かれており、裏面はアメリカ大統領の紋章(鷲の絵)が描かれています。
長く使っているとくすんできて輝きがなくなってくるのですが、ピカールという金属磨き液を使うと輝きが取り戻せます。
年代によって銀の含有量が多いコインもあり、1964年のハーフダラーが一番銀の含有量が多く90%を超えます。
1964年ハーフダラーは側面のエッジがきいていてコインマジックをやる上で非常に扱いやすくて、コインとコインがあたったときの音もきれいに響きわたり、輝きもいいので見やすいです。
1964年ハーフダラーは1枚2~3千円もするので、かなり高価ですが私は愛用しております。
注意としては、銀の含有量の多いコインにはピカールは使わないでください。
ワンダラー
大きいコインの方が見栄えがするということで、アメリカの1ドル硬貨(ワンダラー)を使うマジシャンもいます。
私には大きすぎて扱いづらいので、あまり使っていません。
ハーフダラーと同様に年代によってデザインや銀の含有量が異なります。
銀の含有量が多くてよくマジックで使われるのはモーガンダラー(モルガンダラー)と呼ばれるワンダラーです。
通常のワンダラーやモーガンコインはハーフダラーに比べてはるかに高いので、こだわりの強いマジシャンが使っているような感じがします。
ワンペニー
イギリスの1ペニー硬貨(ワンペニー)もマジックでよく使われます。
ハーフダラーとほぼ同じサイズで、コインショップによってはハーフダラーよりも安く販売されております。
銅貨なので、ハーフダラー(銀貨)からの変化現象に使われることが多いです。
側面にギザギザがないので、ロールダウンなどのフラリッシュはやりにくいです。
チャイニーズコイン
真ん中に穴があいていて、漢字が書かれている硬貨全般はチャイニーズコインと呼ばれています。
ワンペニー同様に変化現象で使われることが多いです。
一般に流通している硬貨ではなく、マジック用に作られたハーフダラーと同じサイズのコインを使うことが多いです。
ジャンボコイン
マジック用に作成された直径7.5cm程のコインをジャンボコインと呼びます。
ハーフダラーやモーガンダラーなどマジシャンがよく使うコインと同じデザインのジャンボコインはマジックショップで販売されております。
よくある使い方としてはワンコインルーティーンのオチなどで通常サイズのハーフダラー(直径3cm程)をジャンボコインに変化させるというものです。
緒川集人さんやギャリー・カーツなどのように、ジャンボコインだけで出現、消失、増加、変化現象などを行うマジシャンもいます。
ジャンボコインは通常は安くても2千円ほどで販売されているのですが、先日ラスベガスに行った時にマジックショップで見かけたジャンボコインは3ドル程で販売されていて思わず「やす!」と叫んでしまいました。
マンモスコイン
ジャンボコインよりも大きなコインをマンモスコインと呼びます。
直径が12.5cmのもの、17.5cmのもの、21cmのものなど様々なサイズのものがあります。
ジャンボコインでも十分インパクトがあるのに、コインと呼んでいいのかも分からないくらい大きなコインが出現したときの衝撃はとてつもないです。
映像や生を含めて、ふじいあきらさん、沢浩さん、緒川集人さん、ギャリー・カーツなどのマジシャンがマンモスコインを出現させるのを見て非常に感動してあこがれました。
上記のコインが売っているお店
私が関西(大阪)に住んでいるので、関西というか大阪のお店だけになりますが、ご紹介いたします。
たいてい以下のお店で購入しております。
杉本梁江堂(阪神百貨店9F)
阪急百貨店のマジックショップにまだ清水一正さんがいらっしゃる頃に、「阪神のコインショップにハーフダラーやワンペニーが売ってるよ」と教えて頂きました。
配置換えがあったりして、フロアや位置が変わることもあるので、ご注意ください。
調べてみると、阪急三番街や広島県の八丁堀本店にもあるみたいです。
ワンダラー、モーガンダラー、64年ハーフダラーなども販売されております。
銀の含有量の多いコインの値段については、金属としての銀の価格に大きく影響されるので、ご注意ください。
フレンチドロップ
大阪で実店舗のあるマジックショップですが、ネットでも購入できるので大阪以外の人にも有名なマジックショップです。
ジャンボコインやチャイニーズコインを含め様々なマジック用に作られたコインが販売されております。
ジャンボコインといっても、素材・質感・輝き・形などが違うものがあり、フレンチドロップには見た目が非常に美しいジャンボコインが販売されております。
いいものはすぐに売り切れるので、これはイイと思ったらすぐに購入をオススメします。
モーガンダラーも「モルガン・コイン」という名前で販売されております。
大阪の谷町九丁目に実店舗があるので、気軽に実物を見て購入を検討することもできます。
GIN
コインマジック好きには有名な銀次郎さんが運営しているマジックショップです。
コインマジックが大好きな銀次郎さんだからこその品揃えで、マニアにとってはかゆいところに手が届くマジックショップです。
実店舗としてしっかりあるわけではないのですが、大阪市東住吉区の事務所で商品を受け取ることができるので、急ぎで必要なときに重宝しております。
大人数にコインマジックを見せるための工夫
そもそも道具の大きさが小さいマジックなので大人数に見せるのには適さないのですが、少し工夫をするだけでも伝わりやすさが大幅にアップします。
輝きを見せる
銀貨や金貨などの光に当たるとしっかり輝くコインを扱う場合には、輝きをしっかり見せることで存在感を示すことができます。
光を当ててもあまり輝かないワンペニーなどの銅貨は大人数に見せるには適してないです。
輝きを見せるために以下のことを意識すると伝わりやすいです。
- なるべくコインの端の方をつまんでコインの見える面積を大きくする
- 軽く前後に振るようにして観客の目にはチカチカ光るように見せる
- 手の角度を変えながら観客一人一人に見やすい角度で示す(横から見たら線にしか見えない。面を見せる。)
- 照明がしっかり当たる位置で示す
- コインと同化しないような衣装を着る(銀貨を使うのに銀色の衣装を使うのはなし)
- 背景がごちゃごちゃしていないところで演じる。ごちゃごちゃしているなら、幕をはる、体の前(衣装の上)で示すなどする。
音を鳴らす
コインの特徴の一つとしてコイン同士がぶつかったり硬いものにあたると金属音が鳴るというものがあります
音を強調することで、コインの存在感を示すことができます。
マジシャンが金属音をさせるだけでコインを連想してくれる人もいます。
出現させたコインをガラスのコップに入れたり、ワインペールに入れたりすることで、コインが出現したことを強調することができます。
さらに強調したり、盛り上がりを作るためにも、コップやワインペールを揺らして、音を何度も鳴らすというのも効果的です。
複数枚のコインを使う場合にはコイン同士をぶつけて音を鳴らすのも効果的です。
大きな舞台で行う場合はハンドマイクで音をひろうようにすることもあります。
大きいサイズのコインを使う
単純に大きいコインを使うと遠くからでも見やすくなります。
100円玉よりは500円玉、500円玉よりはハーフダラー、ハーフダラーよりはワンダラー、ワンダラーよりはジャンボコイン、ジャンボコインよりはマンモスコインという感じで大きいサイズの方が見やすくなります。
マジックのオチとして、ジャンボコインかマンモスコインを出す、あるいは沢山のコインを出現させるなどすると、途中が見えにくかったとしても、最後がわかりやすいので、観客は自然と拍手をしやすくなります。
観客との距離を近くする
サイズを大きくするのと近い話ですが、単純に観客との距離を近くすると伝わりやすくなります。
大道芸(路上で行うパフォーマンス)の場合は、観客との境界線として引いているロープを動かしてステージを狭くすることで実現できます。
観客との心理的な距離が開いているショーの序盤などは、ロープは広めに引いておいた方が無難です。
観客との心理的な距離が埋まった時に、物理的距離も縮めるようにロープを動かし、そのタイミングで細かいコインマジックを行うと色んな意味で効果的です。
集客力は落ちますが、あえてロープを序盤から狭く引いて、自動的に心理的な距離が埋まりやすい観客のみ集めるというのも一つの手法です。(もしかしたらその方が観客にとってもマジシャンにとっても気持ちよくマジックを進行できるのかもしれません。)
同じ理由でロープを引かず少人数に向けてクロースアップマジックを行うのも効果的になったりします。
ショッピングモールなどのステージで行うときは、最前列の椅子が遠いと感じたら担当者に確認をして観客席の椅子をステージの近くに移動させます。
また、広い会場でマイザーズドリームを演じるときは会場の後ろの観客の体からもコインを出現させてなるべく多くの方の近くでコインを示します。
ちょっとした違いですが、これだけで観客の反応が大きく変わります。
言葉で説明する
「コインが出現した」とか「コインの枚数が変化した」などの現象自体を言葉で説明してしまうというのも一つの方法です。
直接言葉で説明してしまえば、話を聞いている人には現象が伝わりますが、あまりスマートなやり方ではないと思っております。
コインマジックは言葉がなくても伝わる現象が数多くあるのが魅力の一つでもあります。
言葉ではなく直接不思議さを感じてもらうためにも、言葉で直接現象を伝えるというのはなるべく避けたい方法ではあります。
だから、「音が聞こえましたか?」など間接的な言葉で、「コインが出現した」ということを伝えるのも一つの方法です。
コインの音が伝わりづらい状況では言葉の方が伝わりやすいということもあるので、状況に応じて言葉を使ったり使わなかったり、使う言葉を選んだりするといいと思います。
私が演じるマイザーズドリームもしゃべりながら行うこともあれば、一切しゃべらずに行うこともあります。
個人的には一切しゃべらないスタイルが好きです。
細かい現象は注目が集まるまで待つ
小さなコインが出現・消失するなどの細かいマジックは観客にかなり集中力を要求します。
だから観客の集中力のコントロールが大切になってきます。
集中力のコントロールには様々な手法がありますが、一つの大事な考え方としては、観客が特定の空間を注目するには「時間がかかる」ということです。
マジシャンがここ見て!と思っていても、観客が全然そこを見ていなかったら当然現象が伝わりません。
当たり前のことなのですが、この「時間がかかる」ということを意識するとしないでは観客の反応がびっくりするくらい変わります。
具体的に何をするのかというと、何も現象を起こさない時間を長くとる、観客が注目するまで待つということです。
この「時間」によって観客が注目するという空気が出来上がります。
どれくらいの長さ待てばいいのかは、そのときその会場の空気で変わってきます。
空気を読む力が必要になります。(私も読み間違えることがあり、これは本当に難しいです。)
ただし、現象一個やる度に長々と待っていたのでは観客も飽きてしまいます。
もちろん緩急をつけることが大切になってきます。
動きを小さくする
焦点を合わしてほしいところが小さいのに、体を大きく動かしたり、道具を大きく動かしてしまうと、観客の焦点が定まらなくなってしまいます。
小さな現象を起こすマジックでマジシャンがやるべきことは、
- 観客に注目して欲しい「空間」を決める、
- 現象が小さい程、この「空間」を小さくする、
- その「空間」内で道具や手が動くことを意識する、
- 観客がその「空間」に注目が集まるまで「時間」をかける、
- 注目が集まったら現象を起こす
ということです。
まあ要するに「動きを小さく」しましょうということです。
客上げされた人の反応で伝える
ステージに上げられた一人の反応によって、小さな現象でも広い会場の観客に伝えることもできます。
ステージに上げられた人にとっては現象が目の前で起こるので、客席にいる人たちよりも驚きが何倍にも上がります。
その目の前での驚きを表情や体の動きなどのリアクションで表したのを見ることで、すごい現象が起きたんだというのが会場全体にも伝わります。
単純に、マジシャンと客上げした人とのやり取りが面白いというのもあります。
客上げというのは毎回人も変わるし、反応も変わります。
ライブパフォーマンスだからこその面白さがあります。
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